カントウ流通は、人柄を重視する会社。
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山田
Nさん、この度は定年までお勤めくださりありがとうございました。
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Nさん
とんでもないです。こちらこそ、ありがとうございました。
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山田
Nさんが入社されてから、もうずいぶん時間が経ちましたね。
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Nさん
ええ、20年前ですか。あのときは、以前勤めていた会社が倒産して大変でした。
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山田
そこからどうして、カントウ流通に応募してくださったのですか?
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Nさん
前職も牛乳の配送をしていてトラックの運転経験があったのと、自宅から通いやすいというのもありました。いまも覚えていますが、事務所に給油所があるのが珍しく、ここなら大丈夫だと感じましたね。
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山田
私もNさんの面接での印象を覚えています。誠実で礼儀正しく、人柄の良さが際立っていました。ですので、ドライバー経験者としてよりも人となりで採用しましたよ。
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Nさん
ありがとうございます。あのときは従業員もまだ50名ほどでしたね。でも、今日に至るまでドライバー同士の距離が近く、ずっと和気あいあいと働けました。当社は伝統的に、人との接し方が丁寧な社員が多いですね。
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山田
そこは意識していたところで、威圧的な人はどれだけ実力があっても採用してきませんでした。従業員満足を考えて、その方がいいと思っていましたので言及してもらえてうれしいです。

雨の日も風の日もご機嫌であることの大切さ。
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Nさん
最初は食肉卸業者の鶏肉をスーパーに配送する仕事から任せてもらいましたね。小型トラックの仕事から始められたので安心でした。
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山田
当社は、元をたどれば小口配送がメインでしたからね。ベテランドライバーが横乗りして新人教育を行いますが、Nさんはすぐにひとり立ちをされました。深夜帯の仕事でしたけど、体力面は大丈夫でしたか?
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Nさん
まったく苦にならなかったですね。働いた分だけ、きちんと給料日に給料を支給していただけることがありがたかったです。あの時代の運送業界は、給与の支払いが遅れることも当たり前のようにありましたから。
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山田
先代社長のころより、従業員に対して誠実であることは絶対の方針でしたからね。
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Nさん
その後は、弁当チェーンの食材配送や医療食の配送、給食会社の定期便など、いろいろな仕事に関わりました。
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山田
長い付き合いのある取引先様だけでなく新規の案件も多いため、長く働くほどさまざまな仕事に関われますよね。
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Nさん
ぜんぶ面白かったですけど、特に医療食の配送が印象に残っています。病院や老人ホームに運ぶ仕事なのですが、楽しかったですね。
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山田
Nさんは、どんなときも笑顔で出社していましたよね。あれは、だれもができることではないですよ。その変わらなさこそ、Nさんのすごさです。
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Nさん
感情を引きずらないことは意識していました。不機嫌でいると、周りにも影響してしまいますし。
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山田
ドライバーをご機嫌に送り出して、ご機嫌なまま帰ってもらうという方針をいま掲げていますが、そういったNさんの性質を反映しているところはありますね。

運行管理を経験してわかった管理職の苦労。
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Nさん
ひとつの転機として、入社から8年ほど経ったときに運行管理の仕事も兼任するようになりました。
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山田
しっかり管理職として活躍していただくというよりも、夜間に運行管理者がいなくなったときのピンチヒッター的な役割として頼みました。運行管理者の試験はむずかしいのですが、Nさんは一発合格してくれて。あれもすごかったですね。
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Nさん
とんでもないです。兼任とはいえ運行管理者の立場にも立つことになって意識が変わりました。配送業務だけだと気楽だなと。落ち込んで帰ってきたドライバーにどう声をかけたらいいのか、ミスが続くドライバーをどう指導すればいいのか。そういう管理職の苦労を痛感しました。
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山田
そこはいつも考えているところです。Nさんはどちらかといえば、ドライバーの模範として背中で見せるタイプですしね。
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Nさん
まぁ、人をひっぱるタイプではなかったかもしれません(笑)
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山田
ですが、本当に助かりました。24時間稼働している当社において、数時間でも運行管理者がいなくなるとコンプライアンス違反になってしまいます。Nさんの存在はとても心強かったです。
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Nさん
ありがとうございます。あのとき、読書が好きな私のために本を買ってくださいましたね。
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山田
ああ、そうでしたね。ミステリー小説が好きなことは知っていたのでプレゼントしました。そうしたら、仕事中に読んでしまいそうになるとおっしゃるから、じゃあ返してくださいと言った記憶があります(笑)
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Nさん
いやぁ、本は面白いですからね。一回読み始めると止まらなくなります(笑)

「まさか」が続いた大型免許の取得。
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山田
運行管理者時代のお話でいうと、大型免許のことも思い出します。
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Nさん
当社に大型トラックが増えてきたタイミングで、当時はまだ駐車場が狭かったこともあって、駐車する際に1mだけ公道にはみ出さないといけなかったじゃないですか。そうすると免許が必要になるので取得しましたね。
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山田
Nさんが免許を取得したことを知ったのは役員の報告でした。「Nさんが大型免許を取りにいった」と聞いたので、免許の取得費用を渡そうと伝えたら「もう必要ありません」と言われて。なぜかと理由を尋ねたら、「すでに取得しています」と聞いて、ちょっと待ってくれと(笑)もう目が丸くなるくらいおどろきましたよ。
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Nさん
駐車は、大型免許を取得しているドライバーが出社したときに頼めばいいとはおっしゃっていただきましたが、業務外のことを頼むのも悪いですし。
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山田
お気持ちはわかりますけども。それで、Nさんに大型免許の取得費用をお支払いしますとお伝えしたら、「自分で勝手に取得したのでいりません」と、思ってもみなかった言葉が返ってきて(笑)いや、それは無理ですよ、払わせてくださいと言いました。
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Nさん
あのころには、会社の経営も軌道に乗って給与も高くなっていたので、それぐらいはいいかなと思いまして。
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山田
そんなに会社のことを考えてくださっているのかと、うれしい部分はありましたよ。ですけど、はっきり言っておきますが、今いる社員に対して同じことは求めないです。ただ、この一件を通して、Nさんは自分がどうこうよりも、会社にとってこうした方がいいと思えば即行動する人間なのだとあらためて感じました。
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Nさん
やはり会社への愛情があります。ここが好きだったからというのがすべてですね。

定年退職へと至る決断、そして経営層の想い。
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山田
当社は定年後も嘱託社員として活躍できるのですが、Nさんはあえてその道を選びませんでしたね。
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Nさん
正直に言えば残りたい気持ちはありましたよ。ですが、仕事をしていて体力の衰えを日に日に感じるようになりましたので、事故を起こしてしまう前に身を引きました。
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山田
名を汚さず、会社に迷惑をかけずという想いから決断されたというのは、実にNさんらしいです。Nさんのそういう部分を社内のみんなも理解しているからこそ、惜しい気持ちがありながら役員たちも引き留めなかったと聞いています。
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Nさん
体力のお話でいうと、氷菓メーカーの配送で大型車に乗ることになったとき、若手ドライバーを補助につけていただけたことがありましたが、あの仕事は実に愉快でした。
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山田
あれは、役員から出たアイデアです。免許と技術があるNさんと、免許と経験がない若手を組み合わせてみようと。実際に試してみると大成功でしたね。
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Nさん
あの子は非常にパワフルで助かりました。刺激を受けましたよ。
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山田
仕事にポジティブに取り組むところが、Nさんに似ているなと感じています。
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Nさん
しんどいときに、しんどさを感じさせないのも仕事ですから。
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山田
並の胆力ではできないことですよ。これまで20年以上働いてくださって、事故も遅刻もない。そんな人は本当にいないです。たった1回だけ、仕事中に体調が悪いと連絡してくださって、かなり焦ったことがありました。
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Nさん
あのときは、大変でしたねぇ。
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山田
Nさんが連絡してくるということであれば、よほどのことに違いないと思い、すぐに救急車を呼んで、役員に現場へ向かってもらって。たまたま病院へ荷物を配送されていたので、動けそうならそこで診てもらうようにとお伝えしたら…
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Nさん
その病院に受診を断られてしまいました。
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山田
なぜかというと、そこが子ども病院だったというオチがつくという。
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Nさん
ほんとに、もうねぇ(笑)
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山田
ともかく無事でホッとしました。当時は人手が足りない時期でしたが、好きなだけ休んでくださいとお伝えしたのは、あれは、本当に本心からの言葉ですからね。
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Nさん
ありがたいです。
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山田
Nさんが在籍してくれる限りは、なにがあっても最後まで支えようと昔から役員と話をしていました。私にとっても、会社にとっても、Nさんは欠かせない存在です。

これからのカントウ流通に望むもの。
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山田
Nさんは、これからのカントウ流通にどのようなことを期待しますか?
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Nさん
いまのままの感じで、いいところを変えずにいてもらえればと思います。私にとって、当社の強みは人間関係の良さで、陰湿ないじめみたいなものがないことですから。
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山田
それは、ずっとないですね。
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Nさん
ドライバーが守るべきルールは商品を確実に届けること、そして事故を起こさないこと。この2つは、スキル云々ではなく心がけの問題です。長く働きたい会社だと思うなら、だれしも自ずと守ります。当社はそう思える会社で、雰囲気が良いからこそ自然と意欲が湧いてきますね。どうしてこんなに人間関係が良いのでしょうか。
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山田
そうですね、大きな方針としては、経営層の意見がブレないことは心がけています。それだけ自分たちが言った言葉に対して責任を持って行動しているからこそ、社員から信頼してもらえているのだと考えています。
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Nさん
昔から方針は一貫していますよね。
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山田
また、個人でいえば、社員の普段の様子には常に目を配っていて、きっちり仕事をされている人に対しては必ずお礼を述べて評価しています。
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Nさん
たしかに、いつもおっしゃってくださいました。
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山田
同じ姿勢を管理職に対しても求めていて、「なぜあのドライバーが、あんな表情をして帰ってきたのかに興味を持ちなさい」であるとか「なぜ彼の言い分を聞いてあげなかったのか」ということに関しては徹底して指導しています。対話を大事にしないといけないです。
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Nさん
そういう部分が積み重なって、前向きな社員が増えてきたわけですね。実のところ、働く側からしても現在の空気が一番良いです。
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山田
ありがとうございます。とはいえ、管理職サイドがいろいろ思考を巡らせても、やはり穴は出てくるものです。その穴に栓をしてくださってきたのは、Nさんをはじめとした模範的なドライバーたちですから、Nさんには助けていただいたという想いが強いです。今回、対談前に表彰式を執り行いましたが、きっと先代社長も喜んでくれていると思います。
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Nさん
本当にありがたいことです。

地域に愛される会社として成長を目指したい。
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山田
会社が生き残っていくため、乗り越えなければいけない壁がいくつもありました。そんなとき、いつも傍らにいてくださったのはNさんです。振り返ってみても思い出がありすぎて、感謝の言葉が尽きません。
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Nさん
いろいろありましたね。会社が大きくなっていく過程の中で、労働時間が減り、休日が増えました。待遇も良くなりましたし、どんどん働きやすくなってきたことを実感しています。
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山田
社員の人数が増えて、できることも広がったので、いまも職場環境の改善に積極的に取り組んでいます。最近では、地域のサッカー大会を主催するなど、業務とは直接関係のない地域貢献も始めました。
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Nさん
あれは、びっくりしました。すごいですね。
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山田
地域に親しまれる会社でありたいですし、そんな会社で働いているという誇りを社員に持ってもらえればと思っています。制服をリニューアルする際にデザイン面にもこだわったのも、その一環です。
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Nさん
今後も楽しみです!これからは「あの会社で働いていたんだよ」と知り合う人たちに自慢したいですね(笑)
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山田
Nさんが街でいつでもカントウ流通のトラックを見かけられるように、もっと会社を発展させていきますね。
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Nさん
本当に期待しています。保有するトラックが200台もいけばすごいことですね。
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山田
その目標を、ぜひ叶えたいですね!その規模まで成長できれば、もっと働きやすい職場を実現できそうです。本日は、対談していただきありがとうございました。いつまでもお元気でいてくださいね。


