祖父の介護にあたる母や姉の姿を見て、一度は介護の道を志しましたが、大学で学んだ服飾の知識を活かすため、靴屋へ就職。出産を機に仕事から離れたものの、子育てが落ち着き、仕事復帰を考える中で頭をよぎったのは、祖父のような人の役に立ちたい、手に職をつけたいという想いでした。最初は、偶然、看護助手の求人を目にしたこともあり、医療機関へ転職しましたが、その方により踏み込んだサポートがしたいと考え、デイサービスを経て『明石恵泉福祉会』の第3特別養護老人ホームへ入職。当時は珍しかったユニット型のケアをすでに展開していたこともあり、大人数を見守る従来型以上に、当法人なら入居者様一人ひとりとじっくり関われる介護ができると感じたことが決め手になりました。

入職当初は、新しい環境への期待を持ちつつ、本当に務まるのか不安を抱えていたのも事実です。ですが、勉強会や研修へ参加する機会が多かったほか、介護主任やフロアリーダー、先輩職員からの手厚いサポートのおかげで、すぐに安心感を覚えるように。特養という入居者様の日常を支える場所では、共感して話を聞くことの大切さを学びました。それは、認知症の方であろうと介護度の低い方、高い方であろうと変わりません。実際の現場でも、職員みんなが一人ひとりの意志を尊重しながら、入居者様と向き合う姿がありました。その光景は入職したばかりの私の心に深く刻まれ、今も自身の心がけの一つに置きながら、日々のケアにあたっています。

現在は、フロアリーダーとして職員の管理や指導にも従事。教育に関しては、一方的に説明するばかりでなく一緒に物事を考えることで、自発的に行動する姿勢や考える力を備えた人材の育成に努めています。はじめて介護を経験する新人職員もいるため、指導にあたる際は自身も初心に戻り、理解しづらかった点や不安に感じていたかを言葉にしながら接するようにしています。というのも、「宮内さんも最初はそうだったのか」と共感してもらうことで、誰もが通る道なのだと安心感を覚えてもらいたかったからです。新人職員には、まず入居者様との関わり合いを楽しんでもらいながら、焦らずに自信をつけるところからはじめてもらえれば嬉しいですね。

フロアリーダーになり、職員との信頼関係がますます深まったように感じています。これまで指導に携わってきた職員の中に、私のことを「お母さん」と呼ぶ人がいると耳にしたときは、頼られているのかと嬉しかったです。その職員が真摯に入居者様と向き合う姿を見て、指導に携わり良かったと心から実感しました。喜びを感じる一方、壁にぶつかることも少なくありません。私自身、自問自答を繰り返しては落ち込むこともあります。それでも今日まで続けられるのは、失敗をとことん反省した後は、目線を“これから”に向けるようにしていますし、周りの職員や上司にも相談できる環境があるからです。一緒に悩み、解決の道筋を考えてくれる仲間がいる職場だからこそ、この先も前を向き続けられると胸を張って言えます。