注目のラッピング車も登場!東急バスの連節バス「タンデムライナー」運行を見てみる!! [ 前編 ]
「タンデムライナー」誕生の理由は?
東京都の城南地区や神奈川県川崎市・横浜市に路線網を展開する東急バス。
同社では2023年に神奈川県横浜市北部の路線網を管轄する青葉台営業所へ連節バスを導入しました。
連節バスは2連以上の車体で構成される長大バスのことで、1台あたりの収容力が優れる連節バスは人口減少や乗務員不足などが叫ばれる社会状況の中、バスネットワーク維持の課題解決方法の1つとされています。
東急バスでも横浜市と連携し、横浜市青葉区北西部においてバス路線の維持・充実に向けた走行環境整備事業として、6台の連節バスを導入し、「タンデムライナー」という愛称も付きました。
連節バスが2車体を連結したようなスタイルであるため、「2つを1つにつなげた」という意味の英語“tandem”からこの愛称が生まれました。
「タンデムライナー」が走る「青61」系統とは?
「タンデムライナー」は2024年4月1日から、東急電鉄田園都市線の青葉台駅と日体大(にったいだい)の間を結ぶ「青61」系統で、平日の朝ラッシュ時間帯のみ実証運行的に走り始めました。
起点となる青葉台駅はベッドタウンの中にある駅で、「青61」系統の沿線には戸建て住宅や集合住宅がびっしりと建ち並んでいますが、終点には日本体育大学のほか、付近には横浜美術大学、小・中・高校が1校ずつあります。
そのようなことから、沿線住民に加え児童・生徒、学生の利用が非常に多いことが特徴で、一般的な大型路線バスの約1.5倍の収容力のある連節バス「タンデムライナー」が活躍するにはうってつけの路線です。
2024年5月31日現在、「青61」系統の下りにあたる青葉台駅発では平日の8時台が最も多く20本を運行しています。
また、「青61系統」の上りにあたる日体大発では平日の8・10・16時台が特に多く、いずれの時間帯も14本を運行しています。
登下校の時間帯を考慮しているダイヤであることが分かりますが、実は2024年4月1日以降の「タンデムライナー」運行開始後は1~2分ほど運行間隔が開いています。
つまり、全体的な運行本数としては運行開始前までよりも減っているのですが、輸送力の優れた連節バスを運行することで、減った運行本数分の乗務員を他路線に回すなどして経営資源を生み出すことにつなげています。
なお、「タンデムライナー」運行開始前に存在した青葉台駅を起点とする緑山循環路線の「青56」系統は2024年3月31日に廃止。
4月1日からは、長距離路線だった「青56」系統をフィーダー路線化するため、一部経路を変更したうえで、日体大を起点として緑山に至る「緑山61」「緑山62」系統に生まれ変わらせ、「青61」系統の乗り継ぎ系統としました。
これは同じIC乗車券を利用し、「青61」系統と「緑山61」「緑山62」系統を日体大で90分以内に乗り継いだ場合は2回目の乗車運賃がかからないというシステムです。
そのようなことで、「青56」系統では運行間隔が約1~4時間もあったところが、生まれ変わった「緑山61」「緑山62」系統では運行間隔が約40~60分間隔となり、「タンデムライナー」登場は、閑散(かんさん)路線の運行本数を増やすというメリットも生み出しました。
通学利用が多い時間帯に運行
2024年の大型連休以降は夕方の時間帯も「タンデムライナー」の運行が始まりました。
5月下旬のある日の午後、実際に運行を行っている「タンデムライナー」の取材を行ったところ、この日は15時から17時までの間の時間帯に日体大から青葉台駅へと向かう上りの「青61」系統に「タンデムライナー」2本運行されていることを確認しました。
東急バスの広報担当に尋ねたところ、この日の夕方に実際運行に就いていた「タンデムライナー」は1台とのことで、2台目以降は予備となり、日体大もしくは鴨志田団地に待機していて、輸送力増強のため充当されるとのことでした。
2台の連節バスを充当していましたが、いずれも青葉台駅から日体大までの下りは乗客を乗せない回送扱いでした。
この時間帯は下校時間帯であるため、青葉台駅へ向かう「青61」系統のバスは混雑が集中します。
16時半頃、横浜美術大学(すみよし台)から偶然乗車した上りの青葉台駅行き「青61」系統は、「タンデムライナー」ではなく、一般的な大型路線バスでしたが、日体大を出発してすぐ次のバス停の横浜美術大学(すみよし台)で満員状態となっていました。
あまりの混雑ぶりに乗車をあきらめ次のバスを待つ学生が出るほど。
乗客が通路にあふれかえったことで車内移動にも困難をきたし、前扉付近に乗客が固まって身動きが取れなかったことから、途中のバス停で乗車しようとする乗客には前扉を開けて運賃を徴収後、やむを得ず中扉へ廻ってもらい乗車させているシーンも見られました。
そのようなことから、「青61」系統に連節バス「タンデムライナー」が必要とされている理由が身をもって実感できました。
朝ラッシュ時にはまさに本領発揮!
それでも、「タンデムライナー」が本領(ほんりょう)を発揮するのは、やはり朝ラッシュ時間帯です。
2024年5月末、朝ラッシュ時間帯に運行する「タンデムライナー」を青葉台駅前で同様に取材したところ、6時頃から運行を開始しているようでしたが、当初は3台の連節バスで運行をはじめ、7時台に入って青葉台営業所からもう1台が輸送力増強のため出庫して戦列に加わり、8時前に通学客数がピークを迎えることに合わせ4台が稼働する格好でした。
7時半を過ぎると青葉台駅から生徒・学生が怒涛(どとう)のごとく、日体大行きの「青61」系統下りが発車する3番乗り場へと押し寄せます。
8時台になると、約4分間隔で日体大行きが発車していきますが、すぐに次のバスを待つ通学客の列ができました。
発車する大型路線バスはどれも満員状態で、駅前でその様子を取材していると窓ガラスを通して逆側が見通せないほど車内にはびっしりと通学客がひしめいていることに気が付きましたが、「タンデムライナー」ではこころなしか車内に余裕も見られ、ここでも「タンデムライナー」導入の理由が改めてうなずけました。
なお、8時台には3本の日体大行きの急行も運行されており、青葉台駅を出ると終点手前の横浜美術大学(すみよし台)まで止まりませんが、取材時は「タンデムライナー」による急行の運行は行っていませんでした。
東急バスの広報担当によると「タンデムライナー」を急行に充当することもあるとのことでした。
取材をした日の朝ラッシュ時間帯には輸送力増強分を含む4台の「タンデムライナー」が運行に就いていましたが、混雑が落ち着いて来た9時台に青葉台駅に戻って来ると1台また1台と回送表示を出して、青葉台営業所に入庫していき、9時半頃までにはその日の朝ラッシュ時間帯の運行を終えました。
一般的な大型路線バスでは2人の乗務員で2台運行しなければならない利用客数でも、1人の乗務員が1台の連節バスを運行することに替えられる場合もあります。
総合的に見て、連節バス導入は、少子高齢化時代の乗務員不足の課題解決の1つの答えであることはもちろんのこと、バス路線の維持・充実化にもつながってくることが実感できました。
「タンデムライナー」をはじめとする全国各地の連節バスにはそういった期待が寄せられています。
※ 協力 : 東急バス株式会社
※ 写真・文 : 柏葉航大
※ 記事中の車両についてのお問い合わせなどを事業者など関係各所へ行わないようお願い申し上げます。
この記事をシェアしよう!
フォローする
FaceBookのフォローは2018年2月で廃止となりました。
フォローの代わりにぜひ「いいね!」をご活用下さい。