大型・小型の2種の中国BYD製電気バスを導入した平和交通 小型電気バス紹介編
■ 各地で活躍を始めたBYD製小型電気バス
平和交通では今春、中国のBYD製大型電気バスを2台導入しましたが、小型電気バス1台も導入し、電気バスは一挙3台を導入した格好となりました。今回導入された小型電気バスはJ6都市型IIと呼ばれるタイプで、国産バスに例えるなら日野ポンチョと同じクラスの車両として小回りが利くため、住宅街にある狭隘(きょうあい)路線などの運行に適しています。カラーリングデザインは平和交通の路線バスの標準とも言える「スマイリングシャトル」カラーで、アイボリーをベースに緑のラインを配し、アクセントに赤や青などの図形的な模様が入っています。平和交通以外でもBYD製の小型電気バスは、この春から各地でコミュニティバスを中心にぞくぞくと活躍を始めており、関東鉄道が運行する茨城県つくばみらい市の「みらい号」、協同バスが運行する埼玉県の久喜市循環バス、福島県大熊町が運行する生活循環バスなどの例が見られます。また、沖縄県ではJALJTAセールスが運行するツアーバス「やんばる黄金(くがに)号」として活躍を開始しています。
■ 平和交通の小型電気バスJ6都市型IIの性能と仕様
平和交通のBYD製小型電気バスJ6都市型IIは、2021年2月8日登録で導入されました。登録ナンバーは「千葉200か3221」。この車両もすでに大型電気バスで実績のあるリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを備えていますが、容量は105kWhで大型電気バスK8RA都市型Iの容量の約半分です。メーカーのプレスリリースでは急速充電器を使用することにより最短2時間30分で充電が完了するとのことです。フル充電での走行可能距離は約200km。平和交通では大型電気バスK8RA都市型Iと同様に、小型電気バスJ6都市型IIも1日の運行終了後、夜間電力を活用し、翌朝の出庫までに約6時間かけて充電を行います。充電口は交流用の1口と急速充電のためのCHAdeMO(チャデモ)規格の直流用の1口。モーターは定格出力100kw、最大出力165kwの交流モーターで1基搭載されています。最大トルクは1,650Nmです。
■個性的なフロントデザインに洒脱(しゃだつ)な側面デザイン
外観は左右にタテ3灯ずつ並んだ丸型ライトが個性的なフロントデザインです。前面行先表示器窓はフロントウィンドウと一体化したデザイン処理がなされています。側面に目を転じると、2ドア構造で、いずれもスイングドアを採用。扉は全面ガラス構造、側窓下辺とホイールアーチ(タイヤ部分のボディの切り欠き)が後方にかけて切り上がるようなデザインとなっており、洒脱な雰囲気です。側面行先表示器は扉間の側窓内上方前よりに収められています。左側窓は固定窓であるものの右側窓は上段引き違い・下段固定の逆T窓となっています。後面はリアウィンドウ下に後面行先表示器窓を備えているスタイルです。車体寸法は全長6.99m、全幅2.08m、全高3.06mで、ホイールベース(前後の軸距)は4.76mとなります。
■ ユニークな構造の反転式スロープを装備
それでは車内に入ってみることにしましょう。2つの扉の間はノンステップ構造で、後輪タイヤハウス以降が段上げ構造になっています。座席レイアウトは全て前向き座席で構成されていますが、段上げ後すぐに4人掛けの最後部座席が設けられています。なお、運転席直後の2席は折りたたみ式で、折りたたむと車イススペースになります。これら2席は輸入後に取り付けられた座席で、この2席のみ富山県の座席メーカー・天龍(てんりゅう)工業製となっています。車内仕様はほぼメーカーのカタログ仕様ですが、手スリを付けられる座席には全て付けたとのことです。前方の扉前の床面には車イス乗降用の反転式スロープを装備していますが、これはコンパクトに折りたためるユニークな構造のものです。乗車定員は29人となります。
運転席はメーター表示類が近未来的ですが、電気自動車で変速機がないことから、シフトレバーはなく、メーターパネルの左横に前進と後退、中立のセレクトボタンがあります。コンパクトながらもスイッチ類が機能的に配されています。
■ 機動力をフルに発揮して運行中!
平和交通に導入された小型電気バスJ6都市型IIは、新検見川(しんけみがわ)駅~西小中台(にしこなかだい)団地、および新検見川駅~にれの木台中央を運行する検見川線、稲毛海岸駅を起終点として、にれの木台中央を経由する稲毛海岸線、海浜幕張駅~幕張本郷駅を運行する幕張本郷線に充当されます。電気バスのダイヤは固定しないため、いずれかの路線で始発から終発までの間の1交番に投入される予定で、2021年3月から運行を開始しています。
2回にわたって紹介してきた平和交通の中国BYD製電気バスですが、いずれも電気バスであることを示すためのオリジナルロゴ・ステッカーが作成されて車体に貼られています。また、2021年3月18日・20日・25日・27日には、新型コロナウイルス感染症対策を施しながら「げんき でんき チャージ」のキャッチコピーの下、「電気バス体験フェスタ」が本社営業所で開催されました。いずれの日程も利用者やファンから好評を博し、同社が取り組んできた脱炭素社会の実現への取り組みへの理解がよりいっそう深まる契機となったようです。皆さまもぜひ、この春から運行を開始している平和交通の3種類の電気バスに乗車されてはいかがでしょうか。
※ 協力:平和交通株式会社
※ 文・写真 : バスグラフィック編集部(宇佐美健太郎)
この記事をシェアしよう!
フォローする
FaceBookのフォローは2018年2月で廃止となりました。
フォローの代わりにぜひ「いいね!」をご活用下さい。